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歯列接触癖 (TCH)

日常生活の中で、自分の上下の歯がどのように接触しているか意識することはあまりないかもしれませんが、実は歯の接触状態には適切な位置が存在します。今この瞬間、あなたの上の歯と下の歯は接触していますか?

多くの方は、口を閉じれば自然と上下の歯が接触するのが正しい状態だと考えますが、実際には異なります。口唇を閉じていても、上下の歯は少しだけ離れている状態、すなわち「安静状態」が正しい状態です。

この安静状態は歯と歯の間にわずかな隙間ができるように、上下の歯が少し離れた状態です。しかし、現代では無意識に上下の歯を常に接触させてしまう癖、いわゆる「歯列接触癖(Tooth Contacting Habit, TCH)」を持つ方が増えています。TCHとは、意識せずに上下の歯を接触させ続けている習慣のことを指し、歯や顎に多大な負担をかける原因になります。

 

上下の歯が常に接触していると、歯に過度な圧力がかかり、負担が増してしまいます。このような接触が長時間続くことで、歯を支える歯槽骨(しそうこつ)にも過剰な負荷がかかり、歯の健康に悪影響を及ぼす可能性が高まります。例えば、歯槽骨が圧力に耐えきれず、歯がぐらつく原因となったり、最悪の場合には歯が抜けやすくなるリスクも生じます。

 

さらに、TCHが続くと、顎関節にも影響を及ぼすことがあります。顎関節は食事や会話、飲み物を飲む際など、頻繁に使われる部位です。上下の歯が常に接触していると、顎関節がリラックスする時間がなくなり、次第に疲労が蓄積される可能性があります。その結果として、顎関節症と呼ばれる症状が発生することがあります。顎関節症は、口を開けるときに顎がカクカクと音を立てたり、痛みを伴うことが特徴です。場合によっては、食事や会話が困難になることもあり、日常生活に支障をきたすことがあります。

TCHを防ぎ、安静状態を保つことは、歯や顎の健康を維持するためにも重要です。

具体的には、リラックスした状態で口を閉じる際に、上下の歯が接触しないように意識することがポイントです。日常生活の中で、自分が知らず知らずのうちに上下の歯を噛みしめていないか、時折確認することを習慣にすると良いでしょう。特に、集中しているときや緊張しているときなど、上下の歯が接触してしまいやすい状況では、意識的に歯を離し、顎の筋肉をリラックスさせることが大切です。

 

歯や顎の健康を保つためには、日常のちょっとした意識や習慣の改善が大きな違いを生み出します。普段から適切な歯の安静状態を意識し、TCHに注意しながら、上下の歯を無意識に噛みしめないよう心掛けることで、将来の歯や顎のトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。